ふたり輝くとき
この男は、サラを憎んでいるのだ。シュゼットを犠牲にして生き残ったサラを、それなのに呪文を使えず彼女の仇を討つことさえ出来なかった娘(モノ)を。

だが、それが何だというのだ?

サラは生きたいと懇願したわけでもなければ、力が欲しいと頼んだわけでもない。それはすべて、ジャンの都合だ。

娘として接してくれたことなどなかった。サラはどうしてこの男を“父親”だと、思っていたのだろうか。

サラを捨てたり、改造させたり、利用したり……そんな男が、親であるわけがない。

「俺はお前の父親、お前は俺の娘だ!サラ、早くしろっ!俺を――」

サラに縋ろうとするジャンが一層大きく叫び、しかし、それは途中で途切れた。同時に、光の壁が割れてサラの視界が真っ暗になった。

視覚が遮られて敏感になった聴覚――サラの耳に聴こえて来たのはそれまで喚いていた男の呻き声。

鉄の匂いと、生温かい何かがサラの肌にところどころ降りかかった。

「君はサラの父親なんかじゃない。サラも君の娘でも何でもない。サラは、僕だけのサラなんだから」

愛しい人の声が耳元で響いて、突風がサラの目の前を通り過ぎていった。

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