ふたり輝くとき
ユベールは先ほどまで隣国ヴィエントの城にいた。目的は、“赤い瞳”を持つ優秀なクラドール――医者――を手に入れるためだ。

赤い瞳とは、人の細胞に直接手を加えることができる能力のこと。クラドールの家系に稀に生まれることがあり、優秀なクラドールの血が濃いと生まれる確率が高いと言われてはいるが、実際のところ所有者の出生については謎が多い。

今のルミエールは紛争が多く、少しでも優秀なクラドールが欲しいのだ。といってもそれは、“建前”であるのだけれど。

赤い瞳を持っていれば瀕死の人間も助かるし、細胞を破壊することも可能なので暗殺なども簡単にできる。力を使うたびに副作用があるのが難点だが、苦しいのは所有者だけであるから問題ない。

「先ほども申し上げましたように、今のルミエールにはヴィエントとの戦争ができるような余裕がありません」

クロヴィスは眼鏡をクッと指であげる。

「その戦争だってリアがいれば勝てるかもよ。うちの数だけは揃ったクラドールももう少しマシになったんじゃない?」

リア・オルフィーノ――それがユベールの欲しかったクラドールの名前。やっかいなのは、彼女がヴィエント国王レオの婚約者であるということ。そして、おそらくすぐに結婚式が行われて正式な王妃となってしまう。

言ってみれば、今日がリアを奪う最後のチャンスだった。

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