ふたり輝くとき
スッキリとした気持ちで城を出て、正門をくぐる直前。

「ユベール様……」
「ん?」

サラがクイッとユベールの手を引っ張った。振り返ると、サラは泣きそうな顔をしている。

「殺してないよ」

そう言うと、サラは困惑した顔になる。

確かにアドリーヌは動かなかったけれど、死んではいない。

「時を止めてみた。ユベールに教わったんだけど、うまく出来たみたいでよかったよ」

そう、ユベールは彼が帰る前に時を止める呪文を教わっていた。ユベール国王とサラ女王のチャクラを保存していた呪文だ。レフレクシオンと同じく古文書に記された古代の呪文で現代ではもう使える者はいない。習得したばかりのユベールを除いては。

「クロヴィスがアドリーヌを後宮に入れた頃に解除するから」

アドリーヌには残りの生涯を後宮で過ごしてもらう。表の世界に出てくることは2度とない。彼女には、他の者への脅しとして役に立ってもらった。それだけで、今までのことをチャラにするというのだ。感謝してもらいたいくらいである。

「そう……だったんですね」
「なあに?僕のこと、疑ってる?」

歯切れの悪いサラの言葉に、ユベールは膝を折ってサラに視線を合わせた。

「そ、そんなんじゃ――」
「ふぅん?まぁ……いいけど」

サラの心配事に行き着いたユベールは思わず笑う。すると、サラは顔を真っ赤にしてユベールを睨んだ。

「そんなに可愛い顔してもダーメ!」
「イジワルです……」

拗ねて顔を背けてしまったサラの頭に優しく手を置く。
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