ふたり輝くとき
「サラ様がお泣きになると思われたのでしょう?残念でしたね、と言ったらよろしいですか?」
「そういうのがムカつくって言ってるんだよ」

ユベールはキッとクロヴィスを睨みつけた。けれど、クロヴィスは涼しい顔をしてユベールを静かに見つめ返す。

「イジメてばかりいると、他の方になびかれてしまいますよ。例えば、ロラン様は貴方とは違って最後まで仮面を被り続けるでしょうし、ダミアン様も……手段は選ばれないとご存知でしょう」

だから何だと言うのだ。

ロランがサラに近づくだろうことはバカでもわかる。サラにだって、ジャンが彼らとつながっていることをたった今教えたのだ。少しはこの城で暮らすということを理解したはずである。

「別に構わないよ。それで子供ができたとしても、世間には僕の子として公表される。初めては面倒だし、慣らしてくれたほうが助かるくらいだ。それに、この城で血がつながっているかどうかなんて関係ない」

ユベールの言葉にクロヴィスは大げさにため息をついたけれど、ユベールはそれを無視した。

どうしようもなくイライラする。

この側近のせいに違いない。

「それよりもあの老いぼれは、いつまで女の尻を追いかけるつもりなの?」

ダミアンは、側室はもちろん侍女にも手を出している。侍女たちも、気に入ってもらえば側室になれると、子供を生めば自分にも権力を手にする機会が巡ってくると、思っている。

サラがそんなことを考えるとは思わないし、気持ちの上でも父親より年上のダミアンになびくとは考えづらいが……

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