ふたり輝くとき

壊れていく理想

サラは胃の辺りをグッと押さえて起き上がった。

気持ちが悪くて目が覚めてしまった。窓の外はまだ暗い。

昨日、気がついたら部屋に戻ってきていて……それからベッドにもぐりこんで泣いていたのだけれど、いつのまにか眠ってしまったようだ。

夕食も食べていないはずなのにお腹は空いていないし、胃も重いような痛いような変な感じだ。

ふとテーブルの方へ視線を向けると軽食が置かれていて、クロヴィスが眠っている間に置いていってくれたのだろうと思った。

もう眠れそうになくてベッドを出ようと手をついたとき、シャラっとブレスレットが音を立てた。

じわりと視界が滲む。

ユベールは、おそらくサラがロランに会ったことを怒っていたのだと思う。ロランの上着を燃やしたときのユベールはとても怖かった。

必死に涙を堪えていたのに、乱暴に口付けられて目をつぶったら零れてしまったそれ。そしてその後急に“楽しい”と言って笑ったユベール。

混乱して、もう嫌だと思った。逃げたいと思ったら、気づいたときには部屋に戻っていて、自分が呪文を無意識に使ってしまったのだと知った。

ここに居たら、いつかサラは壊れてしまうのではないかとさえ思う。

それなのに、ユベールのくれた琥珀のブレスレットをはずせない。なぜか、サラを引き止める。

初めて会ったときの笑顔や、デートをしたときの優しい眼差しが思い出されるから。甘い、苺味のキスが嘘だと信じられないから。

そんな風に思う自分は子供だろうか。本の世界――おとぎ話に憧れる子供。

サラは涙を拭ってバスルームへと向かった。熱いシャワーを浴びて、スッキリしたい。落ち着いて考えなければいけない。これからのことを。

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