ふたり輝くとき
入ってきたクラドールはサラの腫れた頬を呪文で冷やしていく。すぐに真っ赤だったサラの頬は元通り白くなり腫れも引いていった。

「サラ」

クラドールが出て行った後、サラはベッドに入って丸まってしまった。呼びかけても返事がない。いつもなら、イライラとするところなのに……今は苦しくなるだけだ。

自分は、変だ。

こんな気持ちも、先ほど言いかけた言葉も。

ロランに抱き締められていたサラをお湯に投げ入れたときも、夢中でしたキスも。

サラがダミアンに抱かれそうになったときも、彼女を泣かせたいと思ったことも、その後サラの肌を赤い華で埋め尽くすように唇を押し付けたときも。

何もかも、すべてがおかしい。

「サラっ、どうして返事をしないの?」

耐えられなくなったユベールは、サラの身体を無理矢理起こした。サラはまだ、涙を流したままだ。

「もう、嫌です……帰りたい。私は、お祖母様のそばにいたかった」
「っ、どうして?君は、王子様に、僕に憧れて来たんじゃなかったの?」

先ほどから、帰りたいと……ユベールのそばを離れたいというその意味の言葉が痛い。

「ねぇ、サラ!」

答えないサラの顎を掴んで自分の方を向けさせるけれど、その瞳にはユベールは映っていなくて……
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