いちようらい福
「もう2年か、付き合ってすぐの時には一日千秋の思いだったのに、気付けばあっというまだね。」
小山田聡太は話すとき、しばしば難しい言葉を使いたがる。
知的な顔立ちに似合って、読書が好きなのだ。
「そうだね、付き合い始めはドキドキもしたけれど、今は落ち着くような幸せな気持ち。」
恵美は赤いワインを、白い喉をこくこく鳴らしながら、半分ほど飲んだ。聡太は、恵美のこういう、所作が男前なところや、それでいて、ぬけたところが好きだったりする。聡太は、ちびりとオレンジジュースをすすり、辺りを見まわして「この部屋の問題は、荷物が広げて置けないことくらいで、僕たち二人なら十分だね。」と言った。
「まぁね、まさか1Kに2年も一緒に暮らすなんてね。ちょっと狭い気もするけれど。」
聡太はマメで綺麗好きだ。だから、部屋は荷物が多いが、よく片付けられている。恵美は素直に、彼のことを尊敬している。彼は年下だが、大人びていて優しい。恵美は彼のそういうところが好きだ。




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