君と、世界の果てで


紗江が、すがるように言った。



「続ければ、いいよ。

それで、仲直りしよう」


「……何だ、そりゃ……」



この前は、鬼のような顔をしたくせに。



「お前だって、陸と付き合ってた事、隠してただろ」


「……!」



紗江は一瞬驚いた後、うつむいた。


知られたくなかったんだろう。



「でも……陸君とは、すぐ別れたの。

陸君には、その前から他に好きな人がいたから」


「お前の方が、陸を好きだったんだな」



紗江の肩が、震えたのがわかった。


陸の葬儀の時の、取り乱した顔を思い出す。



「問題は、そんな事実じゃない。

俺も、お前も……失った物の代わりに、お互いを縛ってた」


「……」


「それが、問題なんだ」



紗江の目から、涙がぽたりと落ちた。



「クリスマスのライブで、はっきり自覚しちまった。

俺は、やっぱり。

何より、音楽が大事だ」


「翼……」

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