君と、世界の果てで


陸は結局、夜中になって紗江が帰った後も、スマホをとりに来なかった。



「お兄ちゃん、暇でしょ?」



次の日、ニコニコ笑顔の母親に、陸の家の合鍵と、弁当を持たせられた。



「あいつ、いるかわかんねぇぞ」


「そしたら、冷蔵庫に入れといてよ」



俺の都合も、陸の意見も聞かないで。


ま、何も用事はないんだが。


なんとなく、陸に会いたくねぇんだよな……。


昔から、両親とも陸に甘い。


小さな頃に、体が弱かったせいもあるのか。


高校を出て、フリーターになって、バンドやるって言い出した時も。


別に良いんじゃない?だし。


独り暮らしがしたいと言えば。


会社所有の売物件を、タダで提供してやるし。


まぁ、あの容姿で、地元じゃ有名だから、スカウトされて芸能界デビューって事もありえるけど。


俺の時は、

長男なのに何言ってるの!

って、あっさり却下だったような……。


全く、この世は不公平だ。


陸がバンドをやりはじめたのは、俺の影響だから、そこはなんとも言えないが。


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