君と、世界の果てで


「翼じゃない!!ろ、録画録画!」

「げっ!!」



テレビに映ったのは4時のニュースで、昼間撮られた映像が流れていた。


そういえば、顔や名前を隠す交渉をするのを忘れていた。


そんなのしなくても、一般人だからむこうがちゃんとやってくれるだろうと思い込んでいた。


自分の息子がいきなりテレビに出て、純朴な母親はパニックになっている。



「あ、事件の事を聞かれたのね」



テロップに、『バンドマン、駐車場で硫酸をかけられる』などと書かれていた。



「早く言ってよ!ああもう、録画しそびれた!」


「するなよ、そんなもん……」


「何、ボーカルの子って綺麗なの?」


「あぁ……息子が大怪我したのに、楽しそうだな」


「おバカ、違うわよ。

ただ、ビックリしてるのよ!」



……嘘つけ。


どいつもこいつも。


俺のため息と、母親のため息のタイミングが重なる。



「……翼、テレビでも男前ねぇ」


「……いい加減にしろよ……」

< 290 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop