君と、世界の果てで


「実物は、捜査が済んだらお返しします」



俺は、もう二の句をつぐ事ができなかった。


写真には、一枚のメモが残されていた。



『みんなごめん



兄ちゃん、ベースは返す



おさきに』





兄ちゃん。



幼い陸の呼ぶ声が聞こえた気がした。



叫びたいのに。



声が出ない。



陸。



何でだよ。



大丈夫って、言ったじゃねえか。



突然、膝の力が抜けて。



床の冷たさが、下半身に伝わった。



涙がジャケットに落ちて、ボタボタと音を立てる。




何もできなかった。



異変は感じていたのに。



何も。



できなかった。



ごめん。



ごめんな、陸。



ダメな兄貴で。



ごめんな。



何故か俺は、先程見た流星を思い出した。



あれに乗っていったのか、陸。



死んだ猫に会えたか。

< 46 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop