君から、私へ。 私から、君へ。

突然に

「ただいまー」


リビングに入り、お母さんに声をかける。


「おかえりなさい」



タマネギを切っていた手を止め、こちらに振り向く。
…んー、なんか目がすごくウルウルしてるのは…

…気のせいだね、きっと。


「梨柘ー!!!
タマネギ切ってよ!」

「嫌」

「だってこのタマネギすごく目にしみるのよ!
タマネギに反抗期なんて求めてないんだから大人しく切られなさいよ!!!!!!」


なんだその訳のわからないキレ方は。

たまに…ではなく、いつも『この人は本当に大人なのか』と思う。


「…貸して」


目をしぱしぱさせながらまな板まで切れそうな勢いでタマネギをぶった切るママに見かねて、代わりにタマネギを切る。

…うわ、本当だ。結構キツい。




そう言えば昔、調理実習のときだっけなぁ。

麻緒がさっきまでのママみたいにタマネギぶった切ってて。


なぜか麻緒は絶対に包丁を離さなかったから、みんなでハラハラしながら見守ったんだっけ。



「…できたよー」

「おお!ありがとう!!

じゃあ肉とニンジンつっこんで混ぜて焼いて。」

「やだ」

「けち」

「やだ」

「…。」

「…………。」

「…わかったよ、やるよ、」




…よし、勝った。


「お風呂入ってくる」

「はいよ」
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