secret name ~番外編~
恋人に嬉しかったかと聞かれるまで、動揺の方が大きすぎて、気付くのが遅かったのだ。
あの時とっさに出たありがとうの言葉には、その気持ちが込められなかったから、自分を好きだと言った彼女は傷付いただろう。

(俺、まだまだ未熟や・・・)

ノーヴェの方が素直なぶん、言葉は少ないが相手に伝わるものがある。
だが、自分はどうだ。
言葉ばかり達者なくせに、肝心な事はいつも伝えられない。
クアットロと話したおかげで、猫としての自信は取り戻したものの、佳乃を傷つけて、自分の未熟で何も言えなかった事が、胸に引っかかって消化出来ない。
アルコールで流し込もうとしたのが、間違いだったのか。

「あの人、傷付いたわなぁ・・・」
「?」

小さくつぶやいた言葉の意味は、目の前の鈍感な恋人に届かない。
いや、届かなくていい。
なんとか自分の中で消化しなければ。
「俺、アカンわ~・・・」
グラスを置いて、ベッドに倒れ込む。
今日はこのまま寝てしまいたい気分だ。
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