禁断の果実





そう思いながらもせっかくのチャンスを逃す訳にはいかないと、あたしは部屋の奥へと進んだ。



あたしが1年の時まで使われていただろう、旧音楽室にあった椅子にあたしは座り、
先生は紙コップの中にポットのお湯を注いでいた。


先生・・・ここ使ってるのかな?

そんな先生の後ろ姿をボーっと見ていたら、先生があたしの目の前に紙コップを置いた。


「お茶しかなくてごめんな」

「・・・いえ、ありがとうございます」

先生の入れてくれたお茶・・・・すごくすごく嬉しくて堪らない。
ここを知らなかったら、一生飲める事なんてなかった・・・。

「ビックリしたよ。椎名があそこで聴いてるなんて思わなかったから」

キュンとなるような優しい微笑みで先生は言った。

どうしたらこんな表情が出来るんだろう?
これじゃあ女の子が勘違いしちゃうよ。

「あ・・・・たまたま廊下歩いてたら聴こえてきたんで・・・」

「もう使わないって言ってたから、使わせてもらってるんだ。昔からピアノ弾く事も好きだったし、歌う事も好きだったから」
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