禁断の果実
*秘密の場所*





旧音楽室を出ようとすると和泉先生は優しく【またおいで】と声をかけてくれた。あたしはにっこりとお辞儀をしてその場を去った。


2人きりになったのなんて初めてで、心臓が飛び出るんじゃないかってくらい緊張したけど、少しの間でもあの空間で2人きりになれた事が嬉しかった。

付き合いたいなんて高望みはしない。だけどああいう時間をまた2人で過ごせたらいいなぁと思った。





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あたしは放課後、今井先生に雑用を頼まれた。使わなくなった準備室の整理だ。

真海と沙絵子はデートだと言ってそそくさと逃げ出したけど、あたしはそういうの嫌いじゃない。生徒が少ない中で学校にいるのって何だか好きなんだ。


準備室の前に立ち止まり、コンコンとノックすると【どーぞ】と低い今井先生の声が聞こえてきた。あたしは失礼しますと一言かけてドアを開けた。


「おう、椎名」

中に入ると、今井先生が本にかかったホコリをパンパンと手で掃っていた。

部屋の中にはいろんな資料や本で歩く隙間がないほど散らばっている。実際あたしも入るのは初めてだった。
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