オレンジジュース~俺と一人の生徒~



直は言った。




「どうしても先生じゃないと嫌だったんだ。先生が、ファーストキス取っておいてって言ってたから・・・」




目を潤ませた直は、俺の左腕にそっと触れた。






ギリギリセーフ。




俺の大事な直の唇は奪われていなかった。




「お前最高・・・えらいえらい。」





FMから流れるクリスマスソング。



直の瞳からこぼれる涙が、赤信号のせいで赤く輝いた。






俺、嫉妬するんだよ。



直、知ってる?



本当はすごく悔しいし、悲しいし、その男にできればもう会わないで欲しい。





でも、


直の一番辛い時期を支えてくれた男なら、俺も認めるしかない。





直は俺とのさよならでたくさん傷ついて、泣いて、


その男に辿り着いた。



責める権利なんてない。



「ありがとう」と言わなきゃいけないくらいだ。



俺の直を、支えてくれて・・・ありがとうってな。




その『たっくん』って奴に。




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