オレンジジュース~俺と一人の生徒~
「どした?元気ないな・・・」
俺は窓の外ばかり見ている直の頭をツンっと突っついた。
直は、少し反応が鈍く、俺が突っついてから数秒して、やっとこっちを見た。
「あのね、先生・・・友達が自分の為に犠牲になろうとしてくれるのって、胸が痛いんだね。でも、その気持ちはすごく嬉しくて・・・私、ゆかりに何をしてあげればいい?」
混乱しているようで、直はよくわからない説明をして、また窓の外を見た。
「何かあったのか?」
俺は初めて直から家庭の悩みを聞いた日を思い出した。
直は心の中に溜め込んだ悩みをすぐに口に出せない性格だった。
あの時も、俺はこうして、車を停めて、直の頭に手を乗せたっけ…
「あのね、あのね・・・ゆかりがね・・・」
涙ぐんだ直が必死で俺に話してくれた。