オレンジジュース~俺と一人の生徒~
こんなにも好きなのに、
こんなにもお互いを想い合ってるのに・・・
別れるのか?
エンジンをかけた。
俺の気持ちが伝わったのか、エンジンがかかりにくかった。
このまま車が動かなければ、俺達はもう少し一緒にいられるのに。
直、今・・・俺とお前は「さよなら」に向かって車を走らせてるんだ。
いいのか?
本当に、直はそれでいいのか?
自分よりも俺のことを考えてくれる直。
わがままになれない直。
俺は無理だ。
直と別れるなんて無理だ。
「俺は・・・ずっとお前を好きでいる。それだけは覚えていて・・・」
直は、『私も・・・』と言った。
「お互い好きなのに・・・どうして別れなきゃなんねぇんだ・・・」
こういう運命だったのか?
だから、俺達はあんなにも幸せだったのか?
短い恋だから、神様はあんなにも幸せをくれたのか?
「さよなら」へのドライブはあっという間に終了した。
直の家の前で車を止めた。
ラジオのFMから流れ出したのは、俺が好きな曲だった。
学生時代に、この洋楽を聴いて、日本語訳を知りたいと思った。
それがきっかけで英語の勉強を頑張ったんだっけ。
悲しいメロディー。
悲しい歌詞・・・
でも、心が温かくなる歌だった。
こんな気持ちでこの曲を聴くなんて、あの頃の俺は想像もしていなかった。
まだ何もわかっていない子供だった。
まさか、自分にこんなにも愛する人ができるなんて思ってもみなかった。
その人をこんな形で失うことになるなんてことも・・・
涙が溢れてきた。
でも、直は気付かない。
直は窓の外を見ている。
それとも、窓に映る俺の姿を見てくれてる?