オレンジジュース~俺と一人の生徒~
俺は机の上のマウスに触れ、直を見た。
中に書かれた『スキ』の文字は俺の宝物。
「中の文字・・・消すか?」
「うん・・・」
急に声が小さくなった直。
「やっぱ消さない」
「そっか・・・」
うつむいたまま直は動かなかった。
「先生ちょっと貸して!!」
突然大きな声を出した直は、俺からマウスを奪い、中のボールと油性ペンを持って、机の裏へ移動した。
「お~い。矢沢ぁ?何してんの?」
「もうちょっと待って!!」
戻ってきた直は、マウスの中にボールを戻して、絶対に中を見ないで、と俺に言った。
消したのか?
怖くて、見れねぇよ。
その時、教官室にいた先生が席を外した。