オレンジジュース~俺と一人の生徒~
「お前じゃないと、だめ・・・」
直の手が俺のジャージを掴んだ。
「せんせ・・・」
もう離したくない。
「先生、鍵閉めなきゃ!!」
「お・・・おぉ?」
冷静さを失ってる俺。
いつの間にそんなにしっかり者になったんだ、直。
鍵を閉めた俺を見つめる直は、懐かしい笑顔を見せて、こう言った。
「あれ、言ってよ。いつもの!!」
「鍵閉めちゃったぁ!!へへ・・・」
俺が照れながらそう言うと、直は飛びつくように俺に抱きついてくれた。
直から。
直から・・・
俺の体にくっついて、キスをしてくれた。
音楽室は独特の匂いで俺の心をくすぐった。
カーテンの向こうから差し込む太陽が、
暗いトンネルの先に見えた出口のようだった。