オレンジジュース~俺と一人の生徒~
「矢沢の具合・・・どうですか?」
授業のなかった俺は、静まり返る廊下を歩き、保健室へ向かっていた。
「まだ眠ってますね。相当疲れていたのかも知れませんね・・・」
俺はカーテンの中の矢沢を覗いてみた。
「眠り姫・・・ぷぷぷ・・・」
俺は、1人で笑ってた。
だって、こんなにかわいい寝顔って・・・見たことない。
「せんせ・・・」
え?
起きてんのかぁ?
ドキドキ。
俺は、カーテンをそっと開け、ベッド脇の椅子に腰かけた。
「お~い。大丈夫か?」
小さな声で矢沢に声をかけた。
黄色いタオルケットを首までかけた矢沢は、寝返りを打ちながらまた・・・
「せんせ・・・せんせい・・・」
俺の名を呼んだ。
あ。
俺じゃないかも知れない。
『先生』なんてたくさんいるんだもんな。
何うぬぼれてんだぁ、俺・・・
でも・・・その時、なぜか矢沢の呼ぶ『先生』が、俺なんじゃないかって思ったんだ。