オオカミ系幼なじみと同居中。

「今まで、未央にたっくさん嫌な思いさせてきただろ?」



耳元を要の声がくすぐる。

そのたびにあたしの心臓は、ドキドキと加速する。
このままじゃ、壊れちゃうんじゃないかって程に。 



「……俺さ、ちゃんと女の子と向き合うの初めてで。
ちゃんと真剣に付き合うって、した事なかったんだ。
どうしたら未央が喜ぶかとか……
どうしたら気持ちがちゃんとうまく伝わるか……とか。
めちゃくちゃ考えてさ。
でも考えてとった行動が裏目に出てギクシャクしたりして。

ほんと……俺 かっこ悪いよな」


「付き合うの初めてって……美咲さんは?」


「……美咲は俺らのグループの、別のヤツと付き合ってた。
そいつとは俺も仲良くて……」



そこまで言うと、要は面倒くさそうに溜息をついて、さらに続けた。



「……美咲のその時の男が浮気したんだ。 あいつ、めちゃくちゃ怒ってさ。腹いせだって、美咲が標的にしたのが……」


「……要?」


「――そ。 付き合ってくれなきゃ死ぬーって言うんだぜ?
俺……マジで怖かった。脅迫だっつの」



美咲さん……それはまずいよ……。

あたしはカフェで花のような笑顔を振りまく美咲さんの笑顔を思い返していた。



「……大変、だったんだ」



あの天使のような微笑みに迫られたら、男なんてきっとイチコロなんじゃないかな?

腕の隙間から見上げると、その視線に気づいた要と目が合う。

鼻の頭が寒さで、ほんのり赤く染まってる。



「……あんなの、付き合ったうちにはいんねぇよ」



首を少し傾げて、真上からあたしを見下ろす要。
その真っ直ぐな瞳に、あたしは思わずたじろいでしまう。
こんな至近距離で、要の顔を見るのは久しぶりな感じがする。



要はずるい……

真っ黒でやわらかな髪。
女の子みたいに綺麗な肌。
子犬みたいな純真無垢な瞳……少しあがった唇。



要と……美咲さんか。


なんか、お似合いなんだもん。


無理矢理って言っても 妬けちゃうな。






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