オオカミ系幼なじみと同居中。


「――思ったんだけど。 未央ってさ、俺の事好きなの?」

「はあ!?」



顔を包む手の指が、答えを促すように唇をなぞる。



「……か……要……く……」




あたしは……



要の顔が近付く。
伏目がちに、少し顔を傾かせて。

抵抗しようとした瞬間、あたしの両手は要によって自由を奪われていた。
あたしは反射的にギュッと目を閉る。


うわッ キキ、キ……キスされる!?


待って待って待ってぇぇえ!




「……」

「……?」



……って、あれ?



要の気配はすぐ近くにあるのに、何も起きない。
恐る恐る目を開けると、要はまだそこにいた。

上目遣いであたしの顔を覗き込む要。





ひゃあっ!
ちっ……近すぎだからっ!


あたしの顔を覗き込んでいた要の長い前髪が揺れている。
顔を真っ赤にして、おろおろするあたしを見て、要は悪戯に口角を上げた。



「名前、呼んでよ」

「……は!? ちょ…ちょっとふざけてないで離してよ」

「言わないならずっとこのままだぜ? 要って、ちゃんと言って?」



要は、子供のように笑っている。


何よ 何よ 何よ 何よっ
その勝手な発言!


体から湯気が出そうなくらい火照ってしまっている。


心臓がドクドクと今までにない速さで音を刻む。
そのせいなのか、目の前がぐらりと歪む。
体は震え、鼻の奥がツンと痛む。


く……悔しい!!!



「か、要っ…………」



あたしは、要の事どう思ってるの?
手首が痛い。
要はあたしの手を掴んだままさらに抵抗できないように頭の上に持っていく。



「何? 聞えない」

「要っ!もういいでしょ? 離してよ。あたしは別にあんたの事なんてっ……」



あたしの言葉を遮るように要は強引に唇を塞いだ。
その強引さとは裏腹にキスは、とても優しくて驚いた。


< 59 / 301 >

この作品をシェア

pagetop