オオカミ系幼なじみと同居中。

シ―――――ン




再びクラスが静まり返る。

顔が一気に顔が赤くなるのを感じた。


もう、やだぁ。





あたしはそこから逃れたくて、お弁当をしまうと鞄に突っ込みながら立ち上がった。


「ト、トイレ行ってくんね」


教室を飛び出すとき旬と目が合った。
でもあたしはそのまま走りだした。


恋愛は得意じゃない。

片思いの時はほとんど自分の妄想で盛り上がっていられたけど、今は身近にその存在がありすぎて妄想だけではすまなくなっている。


はあ……。



トボトボと歩いていたあたしは、中庭にやってきた。



昼時だけあって、ご飯を食べながら楽しそうに話す生徒がたくさんいた。
ここは、ベンチもたくさん設置されているし、いつもキレイに剪定された芝生や草木の中にちょっとした小さな噴水なんかがあって、フランスの田舎の庭をイメージして作られている。


その中をさらに進む。
少し行くとあまり人が来ない。
あたしは腰をかがめて、木々の間を進む。

周りは背の高さまである庭木に覆われているけど、その場所だけは太陽の光がぽっかりとさしこんでるんだ。

この場所で、手足を投げ出して空を見上げると、どんより曇っていた気分が次第に晴れてくるみたい。


あたしのお気に入りの、秘密の場所。


今日もお世話になります。


なんて思いながらその場所に顔を出す。


「……ん?」


あれ?


おかしいな、今日は先客だ。





< 82 / 301 >

この作品をシェア

pagetop