黒姫

私は、何をしているんだろう。

確かに、黒瀬のことは好きじゃない。
ううん、嫌い。

でも、だからって、私が黒瀬のことを勝手に話していい理由にはならない、絶対。

だって私が黒瀬だったら、話されるのは嫌だから。




鈴羅と同じ小学校に通っていた人は、この学校のこの学年にはそういない。

鈴羅と瑞姫。
それから、隣のクラスの青野透(あおの とおる)くらいだろう。


つまり、そういうことだ。

瑞姫の過去を知る人間は、少ない。
わざわざ話すことではないし、易々と話して良い内容ではない。




わかっているのに、何故話しそうになったのだろう。

もしかしたら……私は、まだ黒瀬のことが羨ましいと思っているのだろうか。


両親に、家族に愛されている私が?
家族に愛されず、虐待を受けていた黒瀬を?

< 19 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop