黒姫

そしてラストはまたしても透である。
特に何を話すでもなく、静かに部屋に居座る透に、ついに瑞姫が言及した。


「ちょっと、何かあるなら早く言ってよ」

無言怖い。そう訴えると、くしゃりと透の表情が歪んだ。
無表情がデフォルトなのに、最近の透は様子がおかしい。
理由は言わずもがな自分なので、瑞姫も指摘しないが。


「……大丈夫なのか、明日」
「大丈夫! 透は心配し過ぎ」


そんな表情をされると、やはり信用が無いのかと軽く凹む。
唇を尖らせた瑞姫に、気が抜けたのか透は表情を和らげた。


「悪い、余計なお世話だったな」


軽く頭を撫でられて、むすっとしたまま瑞姫は透の足を踏み付けた。
地味に体重を掛けたせいで悶絶した透を睨みつけて、


「少しは信用してよねバーカ」


子供っぽく怒っておいた。

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