黒姫
第2章

徒歩20分。
微妙に学校から遠い場所に位置する、『天宮(あまみや)』という表札の掲げられた家の前で、瑞姫は立ち止まった。

無表情だった顔は、嬉しそうに緩んでいる。



「ただいま!」



こんなにも明るい声を聞いたら、クラスメートはひっくり返るだろう。
それ程までに、瑞姫のテンションは解りやすく上がっていた。



「……おかえりなさい」



玄関を入ってすぐそこに見えるリビングから、小さな返答が聞こえた。
瑞姫より年下の、もうすぐ12歳を迎える少女、里沙(りさ)が手に読み掛けの本を持ったまま――むしろ読んだまま、ぼそぼそと吐き出した言葉だった。



「みんな帰ってきてる?」



瑞姫の問い掛けに、里沙はようやく本を置いた。



「……兄さんは帰ってきてる。香奈(かな)は友達の家に遊びに行った。透は知らない」
「透だけ帰ってきてない、ってこと?」
「ん」



そして再び読書に戻る里沙に苦笑して、とりあえず鞄を置くために、二階の自室へと階段を駆け上がった。

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