黒姫

昨年は隣にいた透は今日はいない。
そのかわり、自分から話しても良いと思える“友達”がいる。


「僕が1組、飯島さん4組で……ふふっ、黒瀬さんと西田さんは6組だったよ」
「加藤君、ありがとう」
「うっわ最悪! 黒瀬と同じクラスとか無いわー」
「ひっどい、私少し嬉しいのに!」
「……たまにそういうこと言わないでよね全く」


こんな馬鹿な会話が楽しくて、昨年の自分は物凄く損をしていたみたいだ。


「……黒瀬さん」


4人の内、唯一の男子に声をかけられて女子2人に向けていた首を振り返らせた。


「何?」
「青野君、2組だったよ」
「え、透のも見てきてくれたの? うわあ、ありがとう!」


思いの外高く響いた自分の声に首を竦めると、「何の話ー?」と2人が話に入って来た。


「秘密ー」
「なんだとぅ?」


くだらないやり取りに笑顔を漏らして、瑞姫は緑の目立つ桜の木に目をやった。

今年は良い一年になりそうだ。


瑞姫の笑顔は最高に楽しげで、

――最高に幸せそうだった。



Fin.

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