二手合わせ



しばらくして
山崎さんが部屋に来て、また着物を着付けてくれた。

そして、


「目が見えないだろうから、俺が手を引いていってやる。手を貸せ」

「え、は、はい…」


意外にも優しい力で導いてくれた。
…エスコートされてるみたい、なんて思ってしまったりして、少し顔が熱くなった。

そうしてあの日の桜の木の前についた。

風が吹いてるのに、顔に花びらが当たったりしないことから

軟禁されてるうちに、散り終えたらしい。


アカネの姿を見られたり、会話の内容を聞かれると不味いので、永倉さんをなんとか言いくるめて、少し離れた場所に行って貰った。


「…アカネ、居る?」


小声で言うと


「……うん」


と、返ってきた。
私は立て続けに問う。


「聞きたいことがあるの。私は、本当に帰れるの?」

「……帰れる、けど」

「けど?」

「時間が要るの」


沈んだ声で、アカネは説明してくれた。


「本来、肉体が時空を越えるとき、肉体にも変化が現れるの。例えば、10年後に行くなら肉体も10歳老ける。その変化を無くして、肉体をある時間からある時間に移動させるのって、凄く力を消耗するの」


つまり、
力を溜める時間が必要だ、とアカネは言った。




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