たぶん恋、きっと愛



ど……ん、どぉ…ん



遠くで花火の上がる音がする。

煙の匂いこそしないが、外に出れば、打ち上がった花火の欠片くらいは見えるかも知れない。


鳴り出した音を確かめるように窓を開けた雅は、僅かに眉をひそめた。


鷹野はまだ帰って来ない。

凱司は、いまだ昌也と何かの書類を作っている。


朝、作りかけたブルーベリーのレアチーズパイは、とっくに仕上がっていて。
夕飯のサラダに使うドレッシングと並んで、冷蔵庫に入っている。



「外を見るな」

「…はい」



何かを書き込みながらの凱司の声に返事はしたものの、雅は窓から離れない。

一歩、ベランダへと足を踏み出した。



どぉ…… ん



ぎゅ、と唇を噛んで、もう一歩踏み出す。


あたしは大丈夫、大丈夫だから、と。
言い聞かせるように繰り返し、繰り返し、雅は思うけれど。


指先が冷たく痺れてくる事に、気は、回らなかった。



 
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