たぶん恋、きっと愛


「アフターピルです。飲んでください」

「…………」

「しばらく出血するはずですが、大丈夫」



確かに。
避妊をした覚えはない。

いや、しなかった。

そのまましないで欲しいと、一応は言ったはずだが、半分以上諦めていたのも、事実だ。




「……あたし…」


ふと、声を出して、慌てて口をつぐんだ。


今喋ったら、現実感が湧いてしまう。


大丈夫だ、と思った訳ではないが、改めて突き付けられた“リアル”を感じてしまったら。


…きっと、吐いてしまう。

壊れてしまう。



今も、まるでスクリーンの中を見つめているかのような、そんな感覚を保つ為に。

洗浄されるために乗せられた、診療台の上で。


雅は必死に、ゆっくりと息を吐いた。




…大丈夫。


あらかじめ連絡をしてあったのか、すんなりと処置を施してくれた、小さな産婦人科の裏口から出てきた雅は、それでも徐々に誤魔化しきれなくなってきた吐き気に。


すがるように由紀の手を握った。
 


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