八重桜の木の下で
「じゃあ今まで一緒にいた小崎先生は?」

「まだ入院してるはずでしょーが、仲野!」

「仲野!?」

「オレの担任の? 車にはねられたのに遠足来たの?!」

「あんったねぇ……!人が2週間、意識不明のあんたを一生懸命看病
したり話しかけたりつねったりしてたっていうのに、幽体離脱なんかして
何やってんのよ!なによその姿!私そっくりじゃないの!」

「おまえこそ、ヒトのカラダに何してんだよ……まあ、殴られなかっただけマシか」

「ンなことしたら、看護婦さんにバレるでしょーが!」

「バレなきゃやるんだな……」

「あったりまえでしょう!ぜんぜん目ェ覚まさないんだから!」

「あのー、せんせー」

「お?どした?」

「あんたのことじゃないわよ!」

「だって、今はおれが担任の先生だぜ?」

「私になりすましといて何ほざいてんのよ、このニセモノのゲテモノが!
……なあに?ちー坊」

「オレ、入学式のとき仲野先生に会ったけど、こんな小崎先生そっくり
じゃなかったよ。ふつーの、オトコの先生だった。人違いじゃないの?」

「仲野は昔っから、幽体離脱するのがクセだったのよ。」

「ほら、脱臼するのがクセになっちまうヤツっているじゃんか。」

「あ、俺、腕を脱臼してからよく外れるんだ。自分ではめられるけど。」

「そんなかんじそんなかんじ。」

「あんたがやっかいなのは、幽体離脱してる間、自分のカラダを
ほっぽって、他人の姿に変身しちゃうことでしょ」

「そんなことできるの!? ってゆーか、今もしてるの?」
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