あたしが見た世界Ⅲ【完】
彼の声音は、この刀で俺が出来なかったことをやってほしい、といっているわけでもなく、今まであたしに酷いことをしたのを詫びているわけでもない。
彼女に当てた言葉だ。
「夜一?」
彼の手を握ると、さっきよりも冷たくなっているように感じた。
「……なぎ…さ」
彼が目を閉じると、彼の目尻から涙が伝った。
そして彼は届かない言葉で、『ありがとう』と唇を動かした。
「…よいち……」
彼の口は弧を描いていた。
彼の手はさっきよりも更に、冷たくなっているような気がした。