超能力者は暇ではない

京は先ほど久保から奪ったカラオケの会員カードですんなりと入り口を開けると、リオと久保を手招きで呼び寄せた。

二人は京に続いてマンションに入ると、そのままエレベーターに乗り込んだ。

七階のボタンを押し、エレベーターの上昇が始まると、久保が怪しいものを見るような目で二人を見た。

「……あのさ……二人は何者なの?人間じゃないの?てか今カラオケのカードでマンション入ったよね?」

「いや、俺たちは人間だよ。ただ少し普通じゃない能力が使えるだけで。あ、あとこのカードありがとな」

そう言いながら京はカードを久保に返すと、「超能力で一時的にカードキーにしただけだから」と付け足した。

「超能力でカードキーにって……いや、助かったから別にいいけどさ……」

久保は未だに二人の言葉が信じられないようで、一人で何かブツブツ言っている。

そして、そうこうしているうちにエレベーターは小高の部屋がある七階に到着した。

「……君たちの言ってることはよくわからないけど、とりあえず今は信じるよ。あとで詳しく聞かせてね」

久保はエレベーターを降りながらそう言うと、京とリオに笑顔を向けた。

まだ完全に信じてもらえるわけではなさそうだが、久保が京とリオの仲間になろうとしてくれている事は理解できた。

「……ありがとな、久保」

「ありがとうございます、久保さん」

二人が礼を言うと、久保は少し照れながら「どういたしまして!」と言った。

「とりあえず、小高の息子さんの所に行ければいいんだけど……」

そんな事をブツブツ言いながら小高の部屋の番号が書かれた紙を見ている久保。
すると、向こうから高校生くらいの少年が歩いてくるのが見えた。
写真で見た小高にそっくりである。

少年は見慣れない三人に少し戸惑ったような表情をしたが、久保がお辞儀をして「こんにちは。先程電話した探偵の久保です」と挨拶をすると、ほっとしたような笑顔を向けた。

「はじめまして。僕は小高虎太郎といいます。えっと……後ろの二人は?」

自己紹介を忘れていたことを思い出した京は、背筋をピンと伸ばして小高の息子、虎太郎をまっすぐ見る。

「俺は便利屋の京という者だ。こいつは現役女子高生で俺のアシスタントのリオ」

京が自己紹介を終えると、虎太郎は京とリオを交互に見て納得したように頷いた。

「なるほど。便利屋なんですね……今日はわざわざありがとうございます」

そう言って頭を下げた虎太郎が、チラッとリオを見る。
そして頬を少し赤らめると、すぐにリオから目を逸らして咳払いと共に話し始めた。

「ゴホン、えっと……とりあえず部屋で話しましょうか。それにしても、三人ともよくこのマンションに入ってこれましたね。僕がマンションの外まで迎えに行こうと思ってたんですが……カードキー持ってたんですか?」

「え?あ、それは……」

言い訳に困った京が久保に目配せすると、久保がニコニコ顔で言った。

「ああ、実はオレ、ここのマンションのオーナーとちょっとした知り合いでさ、訳を話したらカードキー貸してくれたんだよ〜」

とんでもない嘘だが、虎太郎はあっさり久保の言葉を信じて「それはよかった」と笑った。

「じゃ、汚いですけど部屋に上がってください」

虎太郎はそう言うと、三人を部屋へ案内した。

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