超能力者は暇ではない
とりあえず店に入ってみる三人。
店内は明るくガヤガヤしているが、思ったほど混んではいなかった。
「とりあえず……誰か店のシステムわかる奴いるか?」
京の言葉に、リオも久保も首を横に振る。
「……だよなー……仕方ない、店員に直接頼み込もう」
京はすぐ近くにいたボーイを捕まえると、虎太郎のメモに書かれたキャバ嬢の名前を見せつけた。
「この二人がここで働いてると聞いたんだが、間違いないか?」
「え?あ、ああ……はい」
「今この二人と話すことは可能か?」
「はい。えっと」
ボーイはまだ何か言いたそうだったが、京は構わず話を続ける。
「実は俺とこいつらはちょっとした事情でとある男の情報を集めててな、この……夏季レミと月更ユウカって女がそいつのお気に入りだったんだ」
「は、はあ……」
「で、もしかしたらこの二人なら何か知ってるんじゃないかと思ってだな……だから、その、酒とかナシで話したいんだが」
「酒ナシですか……」
「ああ。とにかくこいつの話が聞ければいいんだ」
「はあ……」
ボーイには京が何を言いたいかわかっていた。
京は、娯楽で来たわけではないからタダで話をさせろと言っているのだ。
「すみませんが……」
ボーイが作り笑いで何かを言おうとしたが、リオが物凄い勢いで喉をチョップしたため、何も言えずに座り込んでしまった。
「という事なんで、いいですよね?」
久保が名刺を見せつけながらニッコリ微笑む。
名刺に書かれた「探偵事務所」の文字で三人を信じたのか、か細い声で「どうぞ……」と呟くボーイ。
京は「よっしゃああ!!」とガッツポーズをすると、周りの視線も気にせずに店の奥へ進んだ。