超能力者は暇ではない



その後も二人のキャバ嬢は、小高と関根について知っているだけ語ってくれた。

わかったことは、関根は小高と同期で大の仲良しということ。

二人の好みは正反対で、小高が細身の女性を好むのに対し、関根はムッチリした巨乳を好むということ。

しかし、同じ女性を取り合って喧嘩をしたことがあるということ。

小高はレミとユウカに金やブランド品を貢いでいて、二人から密かに「お財布」と呼ばれていたこと。

……聞けば聞くほど、小高や関根の秘密が露になった。

しかし、レミもユウカも小高を恨んでいる様子はない。

むしろ、金を貢いでくれる大事な人物として大切にしていたらしい。

「だって、あたしら下っ端のキャバに金やブランド品貢いでくれる人なんて滅多にいないもん。だからあたしら二人、小高サンのことは大事にしてたの。顔はキモいと思ってたけどねえ〜」

ユウカはそう言うと、カランと氷を鳴らしながら酒を飲み干した。

当然ながら酒を用意されていない京は、彼女が酒を飲み干すのを羨ましそうに見つめている。

「もし小高サンが久保サンみたいにイケメンだったら、何がなんでも捕まえて離さなかったのになあ〜」

酔いが回ってきたのか、頬を赤く染めたユウカが久保の肩に腕をまわす。

小高は不細工だったから、金ですら女を縛れなかったらしい。

「あたしらが小高サンについて話せるのはこれくらいかな〜。ごめんねぇ、あんまり情報なくってぇ」

レミが京に抱きつきながら甘えた声で言う。
リオはすかさず彼女を殴ろうと立ち上がるが、あっさりと久保に止められてしまった。

「いや、これだけ聞ければ充分だ。ありがとな」

京はレミを払いのけて立ち上がると、リオと久保を連れて店を出た。

さっきのボーイがおどおどしながらついてくる。

「あの……」

ボーイに声をかけられ、京が笑顔で振り向く。

「ああ、礼がまだだったな……ありがとう。これ、さっきの二人にも渡しといてくれ」

京に3000円分のクオカードを渡されたボーイが、少し戸惑ったように京を見る。

「いや、あの……」

「おまえ達のおかげで情報も得ることができたし、感謝している」

「いや、あのですね、これ……」

ボーイが京に突きつけてきたのは、とんでもない金額が書かれた請求書だった。

「……先程の殴り合いで壊れたテーブルと壁と照明、破れたソファ、それから、あなたが武器代わりにしたドンペリ代です」

「……え、弁償……?」

「はい、全額きっちりと」

「…………」

京はリオと久保に視線を移したが、二人は既に店から遠く離れていた。


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