超能力者は暇ではない
「野口さんの携帯に電話がかかってきたのは、関根さんが消えた直後だったそうです」
電話をしてきたのは女性で、終始敬語だったという。
その内容は、「消されたくなければ奴等の情報を渡せ」というものだったらしい。
「奴等?警察か何かのことか?」
京の言葉に、外山が「いいえ」と答える。
「……超能力便利屋・京……あなたたちのことですよ」
外山の答えは、京の予想を遥かに上回っていた。
「なん……だって……?」
京は血の気が引いていくのを感じた。
「驚きましたよ……まさかあなた達が例の便利屋だったなんて……」
久保が京達を紹介した時、外山が驚いた理由がわかった。
「犯人は恐らく組織で活動しています。そして奴らは、京さんとリオさんのことを知っている」
外山は運転中の相沢にガムを渡しながら言い切った。
犯人が京たちの存在に気づいていると……
京は身を乗り出すと、外山の肩を乱暴に掴んだ。
「それはおかしい!!俺らが動き出したのは関根が消えて数時間経ってからだ!!野口の話が本当なら、犯人は俺らが捜査に乗り出すことを俺らより先に知っていたことになるぞ!!」
「ちょっと、車の中で暴れないでくださいよお!もう着きますよ!」
相沢が汗を流しながら必死に叫ぶ。
京は仕方なく外山から手を離すと、チッと舌打ちをした。
小高を消した組織が、京たちの存在に気づいている……
つまり、京もリオも消されるかもしれない危険に立たされているのだ。
「野口……あいつが……」
京は小さく呟くと、野口に話を聞いた時のことを思い出した。
いくら学級委員とはいえ、野口は真っ先に行動する積極的なタイプの人間には見えない。
もし、野口があの時既に京とリオの存在を知っていたなら、自ら進んで二人と話しに行ったことの説明がつく。
そして、二人に必要以上に小高の情報を渡さなかったことも……
「……くっそ、俺らは自分でも気づかないうちに奴らにハメられてたのか……?」
絶望的な目で下を向く京に、外山が声をかける。
「……安心してください。警察も馬鹿じゃありませんから、何か力になれる事があれば力になりますよ」
外山の優しい言葉も、今の京にはただの慰めにしか聞こえない。
やがて京たちを乗せた車は、警察署の駐車場に到着した。
「着きましたよ」
相沢に声をかけられ、外山が車の外に出る。
京は久保に寄りかかって爆睡するリオの肩を揺らすと、「早く起きろ!」と叫んだ。
「ん……京様……?」
リオは目を擦りながら大きな欠伸をすると、何故かリオの肩に手を乗せてニコニコしている久保を勢いよく殴った。
「痛あっ!何するの、リオくん!」
「何するのじゃねーよ変態!てっきり京様が僕を抱いてくれてるのかと思って全てを委ねていたのに……!!」
もう一度久保を殴ろうとするリオを車から引きずり出し、今度は京がリオを殴る。
「痛っ!なんで殴るんですかっ!」
京は涙目で見上げるリオを無視して歩き出すと、呆れ顔で三人を見つめる外山と相沢を追った。