超能力者は暇ではない


久保は町田に礼を言うと、アパートの玄関を出た。

町田は久保を玄関まで見送りに来ると、ある事を思い出したように言った。

「そういえば、これはあの論文に書かなかった事なんですが……人消は人間と同じ姿をしているため、一般人と区別がつきにくいって説もあったみたいですよ。まあこれは少数意見で、大半の人が人消は消された本人しか姿を見ることができないって言ってましたが」

「へえ……」

普通の人間と同じ姿……
もし、今事件を起こしている人消師が人間と同じ姿をしていたら、まず普通に見つけ出すのは困難だろう。

しかし、「ザイゼン」と名乗って電話をかけてきた人消師は人の言葉を話していた。
つまり、普通の人間と同じように生活している可能性が高いのだ。

「……長引きそうだな、この戦いは」

久保は小さく呟くと、町田に再度礼を言ってアパートを出た。

空は曇り、ぽつりぽつりと雨が降っていた。

「やっばい!オレ傘持ってない!!」

久保は走って駅まで向かうと、ふと京とリオの事を考えた。

(大丈夫かな、京くんとリオくん……)

雨はだんだんと強さを増し、アスファルトの道路に水溜まりを作った。

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