一歩
「久しぶり~、アンちゃ~ん」
「…お久しぶりです」
酒と煙草の匂いが充満する“その店”の名前は“PIECE”。
何が平和なのか全く持って理解できない。
私に話しかけたのは小太りのおばさん。
この店の店長だ。
こんな店を作った人を恨めしく思う。
「じゃあアンちゃん、さっそくだけど207号室お願いね~」
「……はい」
“PIECE”での私の名前は『アンちゃん』。
杏里から取って『アンちゃん』。
本名なんか知られたくもない。
こんな汚い世界で―――――…。