森の奥の沼の話【短編】
僕の父さんは、新しい薬を作る研究者なんだ

って言っても僕にはよく解らない

ただ、ほとんど家にはいない仕事なんだなって事は解るけどね

いつかの冬に僕はすごく熱を出した事があったんだ

苦しくて辛くて、泣きそうだったんだ

父さんもすごく心配してくれて

僕の手をギュッと握ってた

僕はすごく嬉しかった

ずっと一晩中、こうしてて欲しいなって思ってた

でもね

いつものように

僕の額に手をあてると、父さんは仕事に行ってしまったんだ

もちろん、シッターさんが看病してくれてたよ

だけど、僕はよく効く風邪薬より

額を冷やすタオルより

僕は

父さんの手が欲しかった





だからさ

僕、ある時言ったんだ

休みの日に仕事に行こうとする父さんに



父さんが今、作ってる薬なんか失敗すればいいっ!



ってね



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