In the warm rain【Brack☆Jack3】
 程なくして、メイドがリビングにワインを運んできた。


「…やれやれ、まるで夢のような生活だな」


 ネクタイを緩め、エイジはため息を吐いた。


「そう言わないで。運動のあとの一杯はうまいわよ」


 言いながら、ユイはグラスにワインを注いだ。


「運動?」

「そうよ。あなたにしてはシャツがよれているし、上着のあちこちに埃があるし」

「いやまいったね、こりゃ」

「私の推測、外れてるかしら?」


 淡々と言ってのけるユイに、エイジは降参、というように両手を軽く上げた。


「ご明察。大したもんだ」

「今から動いても、いいことはないわ。時期を待たなきゃ…」


 自らのグラスにもワインを注ぎ、それを持ち上げてユイは言った。


「こう見えても、じっとしてるのは苦手でね」


 エイジは目を伏せる。
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