Special Edition


「俺がいないと、出前か出来合いの物か、じゃ無ければ外食だし。ホント、うちらとは正反対の食生活の人達だからさ。2人でご飯を作りに行かない?」

「……………本当に作れないの?……お母様」


寿々さんは腑に落ちない表情で俺の顔を窺っている。


「うん、食器も洗わない。食洗機に任せっきりだし」

「体調を崩したりされてないの?」

「う~ん、母親は何年か前に乳癌の手術をしたかな」

「乳癌?!」

「ん、今は元気にしてるから気にしなくていいからね?」

「…………そうなの」

「それに、お茶だって勿論インスタントだし」

「え?」

「だからきっと、寿々さんなら楽しく母親と上手くやっていけると思う」


寿々さんは伏し目がちに相槌をした。

そして、暫く考え込んだ彼女はパッと顔を上げて、俺を真っ直ぐ見据えた。


「一颯くん、行こう!!」

「え?」

「やっぱり、口に入るものは安全が一番だよ!!」

「そうだね」


……そういうと思ったよ、寿々さんなら。



彼女はソファから立ち上がり、自室へと向かった。



――――俺の実家へ行くという『小旅行』の準備を。



~前編・完~

   後編へ続く………


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