Special Edition
「えっ?!………もしかして、それを持ってくの?」
「あぁ」
「…………」
言い返す気力も失ってしまう。
だって、大和の機嫌がすこぶる悪い。
理由は…………何となく想像がつく。
大和は部屋から持ち出した物を右手に抱え、左手にバスケットを持った。
私は残りのトートバッグを手にすると、
「荷物を車に乗せて来たらそれを運ぶから、小町は手ぶらでいいよ」
「えっ、でも、これくらい持てるし」
「そういう問題じゃない!」
「………でも、本当にこれは、お菓子しか入って無いから軽いよ?」
私に荷物を持たせたくなくて、大和の眉間にしわが寄る。
大事にしてくれるのは嬉しいけど、さすがにバッグくらいは自分で持てるよ。
私は大袈裟にバッグの口を広げて、中のお菓子を見せると。
「ったく、今日だけだからな?」
「ハイハイ、今日だけね」
出掛ける前から機嫌を損ねると大変だわ。
私は敢えてそれ以上触れないようにして、サッと玄関ドアを開けた。
「行こう♪」
「……あぁ」
いつもよりワントーン低い声。
けれど、落ち着いた甘い美声は相変わらず。
へそが若干曲がりつつある大和を横目に玄関を施錠して、私達はお花見会場へと自宅を後にした。