Special Edition


「貸してみ?」

「ありがと」


柾は美雨の手からドライヤーを受け取り、美雨の髪に温風を当てる。

細く柔らかい美雨の髪を優しく触れながら……。


婚約旅行?婚前旅行??

柾と美雨がパラオ旅行から帰国すると、2人の話題で連日持ちきりで。

けれど、美雨の養父である事務所社長の公式婚約表明の通達文に

過去の馴れ初めも踏まえて美談に纏めてくれたお陰で

帰国した2人を待っていたのは、祝福の嵐だった。


「俺さ、半年後に検察官辞めることにしたから」

「えっ?!」

「美雨の両親の件は、同僚の中村に頼んどいたし、今抱えてる案件のキリがついた所で……って言いたいけど、そんな楽な仕事じゃないから、病院の移動時期に合わせることにした」

「………病院」

「ん」

「じゃあ、お医者さんになるってこと?」

「ん、………嫌か?」

「ううん、全然っ!忙しいのはどっちも一緒だろうから、強いて言うなら……」

「ん?」


柾の手が止まる。

鏡越しに視線が交わり、美雨の表情から心中を察した柾。

ドライヤーをドレッサーの台に置き、背後から美雨を優しく抱き締める。


「女医もいるし、看護師もいるし、患者もいるし」

「何、その言い方」

「あぁ~そうそう、レストランやカフェのスタッフにも若い子いるし」

「殴られたい?」


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