愛するが故に・・・
「理香の食べっぷりは気持ちいいな…」

男は私を見ながらそう言った。

『だって…こんなにおいしいの初めてですから…
あっ…最後のお仕事の日に聞くのもおかしいんですけど…』


「なんだ?」


『あの…お名前うかがってもいいですか?』


そうなのだ。
来店してから今まで名前を教えてもらえなかった。

マネージャーは知っていると思うけど、
来店するとVIP席のお客様という伝え方だったから…


「ああ、木下にはいわないように言っていたからな。
 木下ってのはあの店のマネージャーだ。」


『そうなんですか…
 それで、お名前は?』


「俺は…高山和真(タカヤマ カズマ)だ」


『高山さんですか…』


「和真だ。これからはそう呼べ」


これからは???
なんだそれ。
今日でお店も最後なのに、
これからいつ会うことがあるのだろうか…


私の中はまた??だらけだったけど、
まあこの場合は社交辞令ってことで。
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