天使の舞―後編―

  羽ばたきよ届け

天界の王子の妃に、翼が舞い降りた事は、瞬く間に天界中に知れ渡った。


噂は風になり、魔界へも届けられ、2人をよく知るアマネとシラサギは、遅いくらいだと言わんばかりに、祝福を送った。


ただ、魔王となり魔界を守る立場に座ったアマネは、その翼から舞い上がる羽ばたきが、魔界に降り注がれない事だけが、残念でならない。


人間に与えられた翼には、その羽ばたきにこそ、意味がある。


天使でも、悪魔でも、その羽ばたきを浴びた者は100%の確率で、ちゃんと翼を持った子を産む事が出来るからだ。


アマネは、隣に寄り添うシラサギに悟られないように、苦い笑いを浮かべた。


---。


天王宮、乃莉子の衣裳部屋では。


キャスパトレイユとの挙式に向けて、乃莉子がウエディングドレスを試着している最中であった。


自分の好みを乃莉子に押しつけようと、キャスパトレイユは、この部屋に当然のように同席し、口やかましく指示を出しているのである。
< 116 / 142 >

この作品をシェア

pagetop