僕のすべてを、丸ごとぜんぶ。

胸を、握り締められるような感覚だった。


わけ、分かんない。
なんだよ、それ。

 
訳がわからないまま、僕は彼女をものすごい力で引き寄せていた。

「馬鹿じゃないの…っ、」

「かすみざわくん、」


戸惑ったような宮藤さんの声が、僕の胸の中で響く。




「そんなに泣くなら…やめちゃえば良いのに、そんな関係。」

「え…?」

「あんな奴より君のこと愛せるやつ、他に沢山見つかるよきっと!!」


胸に彼女を閉じ込めたまま、僕は言い放っていた。
ほとんど、無意識のうちだった。
愛とか恋とか、馬鹿馬鹿しい。



可愛い女の子と、楽しく過ごせればそれで良い。
楽しいことと気持ち良いことが一番。
楽しくできればそれで良い。
自らしんどい道に足を突っ込むなんて、ほんとに馬鹿げてる。


…そう、思ってるはずなのに。



僕は、今目の前にいる、ろくでもない奴が好きな、ろくでもない、天邪鬼で可愛げのない、彼女が。


宮藤すずなが、好きなのだ。





< 25 / 25 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

午後5時、いつものバス停で。
青禾/著

総文字数/3,070

恋愛(純愛)5ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
夕暮れ時、みんなが帰りを急ぐ時間。 毎週金曜日の午後5時、図書館前のバス停。 バス停なのに、バスに乗らない不思議な人がいる。 聞くと「待っている人がいる」らしい。 貴方が帰りを待つ人は、一体どんな人ですか…――?
桜の君と雪の僕。
青禾/著

総文字数/5,345

恋愛(純愛)11ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
淡い桜色の爪 緩く揺れる貴方の栗色の髪 春の陽だまりのような貴方の匂い どうしてだろう。 今まで当たり前だったものが、 やけに僕を苦しくさせるのは。 今日が最後の日だからですか? 神様、意地悪しないでください。 僕がハツコイに気付いたのは、 貴方と過ごす最後の日でした…―――。
Secret Garden!!〜オトコだらけの秘密の花園〜
青禾/著

総文字数/100,279

恋愛(逆ハー)329ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
俺様×御曹司 神宮寺遥季/じんぐうじ はるき 天然クール×小説家 玖瀬夕都/くぜ ゆうと 小悪魔×ファッションデザイナー 香坂拓海/こうさか たくみ ツンデレ×カメラマン 山科棗/やましな なつめ 三枚目×大阪からの使者(自称) 芳賀竜太郎/はが りゅうたろう オトナ優しい×シェフ兼オーナー 藤沢樹/ふじさわ いつき 薔薇に囲まれたアーチ 洋館のような立派な建物 迷路のような庭園 特別な者だけが入寮を許される 私立桜凛学園所有特別寮 通称S寮 その名も『Secret Garden』。 そこは名前の通り秘密の花園!? っていうか男だらけの花園で逆ハー状態!? 転校早々とんでもない寮に入寮しちゃった!? だけどそこにはけっして触れてはいけない『本当の秘密』がありました…──。 *………………*………………* 中盤以降若干切ない系です。 *作品途中の花言葉は一例であり、色・種類によって様々です。 2012.8.16 『複数のイケメン男子×主人公! 逆ハー特集』掲載作品 読んでくださる全ての方に感謝ですっ* *………………*………………*

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop