これからは…
「あ、黒崎先生」

お疲れ様です

階段を下りると看護師兼しるふの愚痴聞き役である飯田莉彩が声をかけてきた

「お疲れ」

「今日しるふお借りしますね」

「いつも悪いな」

「いいえ」

それだけで言いたいことがわかってしまうのは、この4年間少しずつ距離を詰めていった二人を

ずっと見ていたからだろうか

ああ、でも黒崎先生の言いたいことが分かるようになったなんて言ったら

あのブラウンの瞳がヤキモチを焼いてしまうから言わないでおこう

と、毎回毎回のろけにしか聞こえない愚痴をたれるしるふ向かいによく思う

「4か月出張だそうですね」

相変わらずお忙しい

「まったくだ。最近もう一人自分が居たら楽なんじゃないかと思い始めた」

かなり重症だという自覚はある

「何事もなく4か月が過ぎることを切に祈ってますね」

冗談抜きに

「俺もそれだけを願ってるよ」

なんて儚い願いだったのだとため息とともに思うのは、それから約5か月後のこと

クリスマスが近づく寒い寒い季節のこと
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