これからは…
「黒崎君、君は」

怒気を孕んだ宮本社長の声を、海斗の冷静な声が遮る

「単刀直入に申し上げましょう。仮に本当に宮本ご令嬢が妊娠しているとして、父親は俺じゃないですよ。残念ながらほとんど寮に帰っていないほど忙しかったですしね」

ちなみにあの寮は、防犯カメラがついてまして

4か月分見てみます?

「まあ、そんなことしなくても検査してみればわかることですが」

その時はうちの優秀な産婦人科が大いに活躍してくれますよ

挑むような海斗の姿勢

ここまで海斗を怒らせた人は過去いなかったような気がする

流れる沈黙

何気なく天井を見上げている緊張感のない医院長

慣れているのだろうか

そして今にも泣き出しそうな香澄

握っている服にしわが寄っている

「……ごめんなさいッ!!」

沈黙を、流れる静寂を破ったのは、彼女の声だった

両手で顔を覆って、小さく肩が震えている

「全部、嘘なんです…!!」

ごめんなさい

もう一度小さくつぶやく彼女の声に重ねるように
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