もっと美味しい時間  

「俺のことを慶太郎と呼び捨てにした時、百花が傍にいた……。そういうことだよな?」

「分かってるなら聞くことないじゃないっ」

やっぱりダメだ。何を言ったところで、本当のことを話すつもりはなさそうだ。

「京介、百花は今どこに?」

「下で美和さんと一緒にいる」

二人をここへ呼ぶように頼むと、京介は携帯片手にリビングから出て行った。

「明日香。お前が何を思って起こした行動か分からんが、兎に角百花を誤解させたことには変わらない。ちゃんと謝れよ」

「…………」

明日香は相変わらず面白くなさそうに、まただんまりを決め込んだ。
京介が連絡を終えリビングに戻ってくると、入れ替わりで玄関に向かう。

それにしても、百花も百花だ。
勘違いさせたことは悪いと思っているが、それだけのことで捨てられたとか……。
あいつはまだ俺のことを信用してないのか?
俺がお前以外の女を好きになるなんて、本気で思ってんのか?
何か、無性に腹が立ってきた。
玄関を出て腕を組み、イライラしながら百花を待つ。

今日からやっと一緒に暮らせることになったのに、何でこんなことになるんだよ。

前途多難……そんな言葉がぴったりな、そんな気分だ。
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